郡上市/大野市(岐阜/福井) 杉山(1180.7m)、小白山(1609.2m) 2022年3月20日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 5:10 駐車場−−5:18 斜面取付−−5:58 915m標高点−−6:38 杉山−−8:14 1600m峰−−8:29 小白山−−8:32 休憩(標高1580m付近) 8:42−−8:53 1600m峰−−9:12 橋立峠−−9:44 野伏ヶ岳のトレース−−10:34 小白山谷にかかる橋−−10:43 駐車場

場所岐阜県郡上市/福井県大野市
年月日2022年3月20日 日帰り
天候晴後雪&ガス後曇 北よりの風やや強し
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場上在所集落に駐車場あり
登山道の有無無し
籔の有無残雪に埋もれてほぼ無し。ごく一部に雪が割れて潅木藪が出ていた
危険個所の有無小白山直下は痩せた雪稜&急傾斜で転落注意
冬装備スノーシュー、ピッケル。予想外に雪が締まって安全のためアイゼンは必需に近い状況だったが今回は持たず失敗だった
山頂の展望杉山:西方向に開ける
小白山:立木皆無で360度の大展望(でもガスって真っ白だった)
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント石徹白集落の上在所を起点に杉山〜小白山〜橋立峠を絡めて周回。冬型の気圧配置で天気が不安だったが上在所集落では星空が見えていたので大丈夫だと思ったら標高が高い箇所は雪雲の中で風も強く寒かった。雪質は最高で尾根歩きでは全く沈まずスノーシューは不要だったかもしれない。稜線ではアイゼンが欲しい場面もあり、ピッケルだけでも持っていって正解だった。杉山は古い山頂標識あり。小白山は立木皆無の巨大雪庇上で人工物は皆無。1600m峰〜小白山間の稜線は雪が割れて一部藪尾根を歩く場面もあった。1600m峰〜橋立峠は危険箇所無し。橋立峠から東の谷を下ったが雪庇のブロック雪崩に注意する他は快適に下れた。野伏ヶ岳へのルートに乗ってからはスノーシューを使わずつぼ足でもほとんど踏み抜き無しで歩けた




早朝の駐車場。まだ10台に満たない ここから斜面に取り付く
沢の左岸から登り開始。いきなりの急登 標高780m付近
830m標高点付近 スノーシュー跡
標高900m付近 915m標高点付近
左の谷を越えて隣の尾根に乗ることに 谷に入ったが左の斜面は急でそのまま谷を進んだ
標高1030m付近。まもなく谷が消える 標高1040m付近で再びスノーシュー跡登場
標高1040m付近の熊棚 熊の木登りの跡。ブナは表面がきれいなので爪痕の判別が容易
樹林の隙間から見た芦倉山、初河山方面 標高1100m付近
標高1140m付近 標高1150m付近から見た毘沙門岳方面
1170m肩から南(杉山方向)を見ている 杉山山頂付近の積雪量はかなり少ないようだ。藪も少なそう
杉山山頂。背景は小白山 文字が消えた山頂標識
杉山から見た北西〜北の展望。雪雲がかかっている
杉山北方の1160m峰から北西を見ている ピンクリボンの目印が点在
2つ目の1160m峰は天然?桧が並ぶ 2つ目の1160m峰から見た小白山方面
3つ目の1160m峰から見た小白山方面 1110m鞍部付近
標高1140m付近 自分の足跡。沈むのは新雪部分のみ
標高1300m付近 標高1380m付近
標高1470m付近。ガスに突入し霧氷に覆われる 標高1480m付近。背の高い木が減ってきた
標高1540m付近。新雪とガスでホワイトアウト状態 1600m峰直下の雪庇雪壁
1600m峰。小白山方向を見ているがガスで視界無し。 雪が割れて藪が出た箇所も(藪の箇所を通過した)
大きなクラック。越えることはできず右の藪へ 霧氷をピッケルで叩き落しながら進む
標高1570m付近のナイフリッジ 標高1570m付近の小鞍部。帰りはここで休憩
小鞍部からの登り。急登ありでアイゼンが欲しい場面 小白山山頂
小白山から南東を見ている 小白山から西を見ている
標高1570m小鞍部から小白山を振り返る 標高1570m付近のナイフリッジ
1600m峰から橋立峠方面を見下ろす 1600m峰北側直下。僅かに笹が出ている
異常に発達した霧氷 標高1550m付近から野伏ヶ岳方向を見ている
1490m峰 1490m峰から1600m峰を振り返る
1490m峰から見た東側(岐阜県側)
1490m峰から見た西側(福井県側)
橋立峠付近。東側は巨大雪庇で下れる場所がほとんどない 橋立峠から野伏ヶ岳を見上げる。稜線上に大きなクラックあり
橋立峠から小白山方面を見上げる 橋立峠から東の谷に下りた。ここのみ雪庇が低い
標高1380m付近から橋立峠を見上げる 標高1370m付近
標高1260m付近。傾斜が緩み始める 標高1240m付近から左にトラバース開始
標高1190m付近の熊棚 標高1180m付近。下り方向に倒れたり折れたブナ多数あり
幹がへし折れたブナ。今年発生した雪崩が原因だろう 雪崩現場から上流側を見ている。新たな雪崩跡は遥かに遠い
標高1160m付近 標高1160m付近の尾根上で野伏ヶ岳のトレースに合流
イグルー作成中のグループ 標高1120m付近からトレースは尾根を外れて東へ下る
標高1050m付近。トレースは杉植林の谷筋を下る 標高1050m付近。現在地不明のままトレースを辿る
標高920m付近。ここまでに地形図に記載が無い林道と数度も離合 標高770m付近
小白山谷にかかる橋 除雪終点の車
除雪されているとは言え完全に雪に覆われたまま 石徹白川に架かる橋
橋の東側の駐車余地 橋に下る車道入口にも駐車あり
駐車場は満車 鳥居前のT字路にも駐車あり。でも先週よりは少ない
県道にも縦列駐車


 長らく何度も通った石徹白の上在所集落周囲で未踏の地形図記載の山は杉山だけとなった。野伏ヶ岳からさらに南に延びる県境稜線上の山であるため野伏ヶ岳と絡めて縦走するパターンが多いように思われるが、私の場合は野伏ヶ岳は登頂済みなので杉山だけを狙うことにした。

 ルートであるが、杉山単品だったら上在所集落から石徹白川を渡る橋の先でそのまま斜面を直登すればいいだろう。最初から相当な急登だが今年はこんな登りを何箇所もやっているので大丈夫だろう。

 念のためにネットで杉山の記録を調べたら「小白山」という山がいくつかの記録で登場した。いったいどのピークを指すのかと思ったがピンとくるものあり。野伏ヶ岳南側の顕著なピークで、先週の大日ヶ岳周辺から見ると真っ白な緩やかな双耳峰に見えたピークで、その姿は野伏ヶ岳に引けを取らない。無名なのはもったいないと感じたが地元では山名があったのだ。日本山名事典で調べてみたら記載されており、それならと杉山と絡めて登ることにした。

 杉山と小白山の両方を登るのであれば野伏ヶ岳も登って周回が最高のルート取りだろうが、今回は3連休の2日目に登る計画であり、1日目で体力を使っていて体力が100%ではないこと、3日目も登る計画で2日目で体力を使い果たすわけにはいかない。よって今回は最初に杉山に登って次に小白山に至り、野伏ヶ岳には登らず橋立峠から東の谷を下って傾斜が緩くなる標高1200m付近から左にトラバースして野伏ヶ岳へのルートに合流して上在所に下山とした。これでもなかなか面白いルートだ。

 前夜は先週使った朝日添川に続く林道途中の駐車余地で一夜を過ごして、翌早朝に朝飯を食ってから上在所集落の駐車場に移動。天気予報では今日は冬型の気圧配置で日本海側は雨や雪の予報。ここは日本海側なのか太平洋側なのか微妙な位置で天気を心配していたが、明るい月が出ていて問題なさそうで一安心。

 まだ真っ暗だが既に数台の車が駐車して出発準備中。山スキーヤーの隣に駐車して出発。今回の冬装備はスノーシューとピッケルとした。昨日の大山での雪質を考えればアイゼンは不要と判断したが、これは結果的に失敗であった。稜線は雪がカリカリに締まって登りはスノーシューでも大丈夫だったが下りはちょっと怖かった。ピッケルが無ければ小白山のてっぺんには登れなかっただろう。

 まだ真っ暗な中をLEDライトを点灯して出発。橋を渡った先の分岐は左へ。分岐から目の前の斜面を乗っても良かったが、そこは立ち木がほとんど無くちょっとヤバそうな雰囲気だったので、南にある小さな谷の左岸尾根を上がることにしたのだった。地形図を見るとこちらの方が少し傾斜が緩い。

 凍ってツルツルの車道を少しだけ進んで右手に沢が登場したら道を右に外れて斜面へ。傾斜は急であるが普通に登れる範疇だ。スノーシューはほとんど沈まず快適で、この状況が続けは予定外に短時間で山頂に立てるかもしれない。この付近では昨日の悪天でも雪にはならなかったようだ。登り始めてすぐにライトの光に落ちてくる雪がちらほらと見えるようになった。上在所集落では晴れていたのに県境稜線に近付くと雪雲がかかっているようで、この先が少し心配になる。まあ、雨よりも雪の方がずっとマシではあるが。

 地形図に表記はないが一旦傾斜が無くなって平地が現れた後に再び急登。こちらは樹林の密度が低くて周囲が明るくなってきた。標高830m付近でようやく傾斜が緩んで尾根がバラけて広い斜面状に変わり尾根の中心がどこなのか分からなくなるが、登りはとにかく上を目指せばいいだけなので細かいことは気にせず上へ。すると右手から古いスノーシューの跡が登場。おそらく先週のものだと思うが、場所によっては消えてしまってルート全体で足跡が追えるわけではなかったが、どうもこの足跡の主は小白山まで足を延ばしたようだった。

 傾斜が無くなって水平になった箇所は915m標高点付近のはずだ。地形図を見るとこの付近は尾根が分裂して複雑な地形であるが、杉山北側の1160m峰に突き上げずその東側の1170m肩に出るためにはできるだけ左(東側)を登るのが正解なので、スノーシューのトレースが延びる目の前の顕著な尾根ではなく左側の谷へ下り、その左側の尾根に乗り換えることに。谷に下りて左の斜面を登ろうとしたが傾斜がきつすぎたため、そのまま谷の中を登ることに。ここは適度な傾斜で左右の斜面は今すぐ落ちそうな雪もなく安心して歩くことができた。

 標高1050m付近で谷が消失すると同時に西側の尾根から足跡が谷を横断して東の尾根に向かっていた。915m標高点で見た足跡と同じものだろう。東側の尾根への登りは最初は急登だが雪が締まって全く沈まないので快適に高度を稼げる。これなら無雪期の所要時間とほとんど変わらないスピードだと思う。北斜面なのにこの時期にこの雪質ということは、昨日の下界の雨はここでも雨だったのだろう。雨が降って柔らかいスカスカの雪が解けて今日の冷え込みでカチカチに凍るとこんな状態になる。春の雨は雪が締まるための早道なのであった。

 この付近もそうだが、今回のルートは全体的にブナの木に熊棚があちこちで見られた。山深いエリアなので熊がいて当然だが、今はまだ3月なので熊の出没は無いであろう。ブナも幹の表面は凸凹が少なく滑らかなので、熊が木登りした爪痕がはっきりと視認できる。これがコナラやミズナラだと木の表面に大きな凸凹があって爪痕の判別が非常に難しい。

 大きなブナが中心の快適な雪稜を登っていくが徐々に北寄りの風が強まり寒さが厳しくなってきたので、雨合羽の上着を羽織って顔は目出し帽+毛糸の帽子。目出し帽だけでは風通しがあるので耳が冷たいので毛糸の帽子を重ねると快適になるであった。雨合羽で風をブロックするだけでも体感的にはかなり温まった。今日は長丁場であり重い防寒長靴ではなく登山靴を履いてきたが、登山靴だと防寒が弱くて足の指が冷えてるが、この冷え具合からして気温は-5、6℃といったところだろう。これに強風が加わるので体感的には-10℃くらいの寒さだろう。

 ブナの樹林が開けた場所からは石徹白川を挟んで東側には大日ヶ岳、芦倉山、初河山などが見えていたが、徐々にこれらに雲が掛かり始めた。ちなみに北側の野伏ヶ岳は最初から雲がかかって山頂は見えない。これだと小白山もガスの中かなぁ。橋立峠はガスよりも低い位置でよく見えていた。

 傾斜が緩むと県境稜線に出る。ここで地形図を開いて杉山山頂の位置を確認。ここは杉山北側の1170m肩のはずで山頂は南に延びる尾根上にあるはずでそちらに向かう。この尾根は積雪が少なく地面が見えている場所があった、が思ったよりも藪は薄くてもしかしたら無雪期でも登れるのでは?と思える程度であった。まあ、広範囲でこの植生が続いている保証は無いが。地面が見えるのはごく僅かな範囲だけで、周囲はほぼ全面が積雪に覆われている。

 僅かに登り返した丸い小ピークが杉山山頂であった。スノーシューの足跡があるのかは判別できなかったが、文字が消えた木製の古い山頂標識がブナに掛かっていた。ここからは小白山がよく見えるが上部は雲の中にはいってしまっているので山頂は見えなかった。これからあの中に突入することを考えるとちょっと憂鬱になる。この分では小白山山頂に立ってもガスで何も見えないだろう。でもここまで来たからには小白山にも登っておきたいので、悪天覚悟で前進を決定。

 杉山から1110m鞍部までは小ピークが連続して尾根のつながりが分かりにくい。ここはまだガスの層より下で視界があるのでいいが、これで視界が無いとルートファインディングに苦労しそうな場所だ。ピンクリボンの目印が点在するが数は少なく、これを頼りにすることは無かった。先人の足跡は断続的に判別可能な場所があるが分からない場所も多く、これも頼りにすることはなかった。2つ目の1160m峰ではブナに混じって桧のような針葉樹が生えていたので葉の裏側を見たら本当に桧だった。雪国だと経験的にネズコが多いのだが珍しいパターンだ。まさか植林したとも思えず、その堂々とした大きさからしても自然に生えたものだろう。

 1110m鞍部を通過するとやっと普通の尾根に変わって登りが続くようになる。ほぼブナの純林で高度が上がると徐々にブナの枝が白くなり始めて霧氷が付き始めた。そして霧氷が本格的に発達したアリアに入って標高1450m付近からガスの層に突入。これまでも日差しがなかったがガスに入るとさらに寒く感じ、カッパの上にジャンパーも着込む。登りでこの服装が必要な天候なんて滅多に無いことだ。せめて風が無ければいいのだが、目出し帽から出た顔の皮膚は痛いほどであった。いつの間にか雪はほぼ止んだが強風で新雪が舞い上がって地吹雪状態になることもあり、これが当たるとなお顔が痛い。新雪があるのでこの付近では昨日は雪が降ったようだが、積雪は数mm程度なのでおそらく降りだしは雨だったのだと思う。雪質は相変わらずガリガリの締まった雪で、スノーシューのアイゼンが良く効く。雪面の色は不透明の真っ白ではなく半透明の白なので半分氷に変わっているはずで、これも昨日雨だったと思われる状況証拠だ。この付近からアイゼンを持ってきた方がよかったのではないかとの後悔の念が・・・・

 高度が上がると霧氷の海老の尻尾の長さが5cmくらいにも達するほど発達していた。ガスの中で相変わらず展望は無く、本来ならば左手に見えているはずの小白山山頂は見えない。標高1500m付近からは背の高いブナも見られなくなり立木皆無の雪稜に。山スキー向きの場所だが野伏ヶ岳よりアプローチが悪いのでここまで足を延ばすスキーヤーは少ないと思う。

 立木の無い尾根を登って前方に巨大な雪庇が扇のように左右に広がる尾根が登場。正面が1600m峰で右は野伏ヶ岳方面、左が小白山山頂のはずだ。小白山へ続く尾根は雪が崩れて藪が見えている斜面だけは認識できるが、他は雪に覆われて真っ白でガスの白に溶け込んで稜線がどこにあるのかさえも判別不能、ほとんどホワイトアウトであった。

 1600m峰に出るには雪庇の雪壁を登る必要があるが、杉山からの県境稜線はそこそこ幅が広いので雪壁の高さは2m程度で垂直でもないので突破可能であった。これが痩せ尾根だったらピッケルだけでなくアイゼンも無いと巨大雪庇で登れなかっただろう。ここへ来てアイゼンを持ってこなかったことを本格的に後悔。雪がここまで締まっているとは予想外であった。

 雪庇を登って1600m峰へ立つが、これでもまだ小白山はガスに溶け込んで見えない。それどころ山頂に続く尾根もほとんど判別不能。まあ、顕著な尾根なので間違えることはないと思うが、危険箇所があるのか見えないのが不気味だ。

 ここまで来れば小白山は目前でありガスに溶け込んだ山頂を目指して南西へ。新雪とガスで視界は真っ白で雪面までの距離が把握できないほどで、雪面の凹凸が分からないので非常に歩きにくい。ここは巨大雪庇の上で真平ではなく微妙にうねりがある。もう古い足跡があるのか全く分からない。

 尾根幅が広いように見える場所もどうやら雪庇が大きく発達しているだけで尾根そのものは細いらしい。雪面の右端付近にクラックが走った部分があり、その右側に潅木や笹藪が顔を出した箇所も僅かながらある。1箇所を除いてこの藪は左側の雪面で迂回可能だったが、1箇所だけは尾根を横断する大きなクラックで雪庇が断絶して伝うことができず、海老の尻尾が異常発達した潅木と笹の尾根を歩いた。藪に突っ込む前にピッケルで海老の尻尾を叩き落す。その先に小鞍部があり雪庇は稜線よりやや低い位置にあって西寄りの冷たい風がブロックされるので帰りに小休止に使った。

 小鞍部からの登り返しが今回のクライマックスで、相変わらずガスで山頂は見えないがこれまでと違ってまとまった急な登りであり、これを登りきったところが間違いなく小白山山頂だろう。ここは特に西側が切れ落ちており滑落には充分注意が必要だ。新雪がナイフリッジ状に付いた場所がありアイゼンが欲しい場所だが、無いものはしょうがないのでスノーシューでナイフリッジ先端を突き崩しながら慎重に通過。本来はつぼ足にしたいところだが新雪の下の古い雪はガチガチに締まってノーアイゼンでは危険すぎる。私のスノーシューは登りなら12本アイゼンに匹敵するグリップがあるのでそれを利用しない手はないが、スノーシューは下りではグリップが大きく低下するので急な下りでは使えない。今回はそのような滑りやすい急な下りではピッケルを使いつつバックで慎重に下った。アイゼンだったら前を向いて普通に下れたのだが。

 急な登りが終わって傾斜が緩むと、思ったより穏やかな小白山山頂に到着。おそらくここも巨大雪庇の上だろう。立木は皆無で山頂標識を取り付ける場所はないので人工物も皆無。残念ながらガスは晴れることはなくかろうじて西側の福井側が見えるだけであった。それでもこれまでは真っ白で何も見えなかったので、少しでも下界が見えるということはガスの高さが高くなってきた証拠で、時間経過と共に徐々にガスが晴れてくる可能性が高い。天気予報でも冬型は徐々に緩んでくる予報なので、お昼頃には回復するかもしれない。まあ、それは私が下山してからだろうけど。

 山頂は吹きさらしであまりに寒く休憩できるような場所ではないので、山頂では写真撮影だけして先ほどの危険箇所をバックで下って小鞍部で風を避けてちょっとだけ休憩。カロリーを消費して腹が減ったのでエネルギー補給。登り始めは喉の渇きを感じだが、この寒さで今は全く喉の渇きは感じない。休憩中に山頂への急登りが見えるようになり、確実にガスが薄くなってきた。

 1600m峰に戻り今後のルートを考えた。アイゼンがあればこのまま橋立峠に下るのだが、スノーシューのままで問題ない稜線かが心配である。地形図を見る限りは傾斜はそれほどきつい箇所は無く、極端に痩せた場所も無い。少し考えたがピッケルもあるのでどうにかなるだろうと往路を戻る選択肢は止めて計画通り橋立峠へ向かうことにした。

 1600m峰からの出だしは少し傾斜が急だがスノーシューでも問題なく下ることができた。ここよりも傾斜がきつい場所はもう無く、少し笹が顔を出した雪面を突っ切ってその後は快適な雪稜が続く。1490m峰は再び立木が無い真っ白なピークで、ここから見る野伏ヶ岳南側の県境稜線は尾根直上から西側は藪が見えて黒くなっており、その東側は雪面だが途中に不気味に大きく左右方向に延びたクラックが見えている。野伏ヶ岳から下ってきた場合、あれは通過できないので大きく東へ巻く必要があるだろう。私はあそこは登る必要はない。

 これまでの稜線も東に大きく張り出した雪庇の連続だったが、橋立峠周辺も雪庇が張り出していて簡単に東側へ下ることができない。しかし最低鞍部で雪庇の高さが1m程度に小さくなり簡単に谷筋へ下ることができた。谷間に入ると西寄りの風は完全にブロックされて一気に体感温度が上がって快適になる。しかし稜線の雪庇崩壊の危険性があり、後ろを頻繁に確認しながら快速で下ることに。

 傾斜が緩むまではしばらく谷のど真ん中を下っていく。ここは稜線と違って雪の締まりはイマイチでスノーシューが威力を発揮した。ここも立ち木は少ないスキー向きの斜面だ。相変わらず野伏ヶ岳はガスの中だがここは完全にガスの層の下でこれから向かう先よく見えている。野伏ヶ岳から1164m峰に延びる尾根の最低鞍部を越えて向こう側に回り込む計画だが、これなら地形図を見ずとも問題なく歩ける。

 傾斜が緩んだ標高1200m付近から左へトラバース開始。この斜面は気持ちのいいブナ林が延々と広がっている。途中で多くのブナが斜面の下方向に倒れたり幹の途中から折れたり枝が折れたりと、まるで台風が襲ったような光景に出くわした。最初は夏の間に強風が吹いて倒れたのかと思ったのだが、折れた幹や枝の断面は変色しておらず最近発生したらしい。ということは雪崩以外に考えられないが、この一帯の傾斜は緩やかで少なくとも今の時期ではここまで雪崩が達するとは思えない。しかし豪雪だった今年の積雪期のピークなら大規模な雪崩が発生した可能性はある。ずっと遠くに見えている急な斜面には小規模な雪崩跡が数箇所に見られるが、その末端はここから500mはあるだろう。あそこからここまで届く雪崩など本当にあるのだろうか?と信じられない距離と傾斜の緩やかさであった。

 広大な斜面を横断し終えて小尾根に出ると明瞭なトレースが登場。野伏ヶ岳のルートに合流したのだ。この時間でも登りの登山者は多く見られ、トレースではほとんど雪が沈まないのでみんなつぼ足で、スキーヤーのみスキーであった。私もここでスノーシューを脱いでつぼ足に。足が一気に軽くなるが踏み固められた雪は滑りやすく、アイゼンが無いのが悔やまれた。おかげで何度もコケることになった。かと言ってトレースを外すとつぼ足ではズボっと踏み抜くので、トレースを歩くしかない。

 この先は2年前に歩いているが、その時は地形図に出ている池マークの北側を巻くように付いている廃林道にトレースが付いていたが、あの時は4月中旬で今よりずっと雪解けが進んだ時期だった。今回のトレースは廃林道を使わず残雪を利用してショートカットしているようで、尾根から北の谷筋へ下ってから谷筋を右(東)へ下っていた。この先は尾根地形ではないので現在位置の同定は不可能で、どんなルートだったのか分かったのは下山してGPSの軌跡を確認してからであった。林道を使ったのはごく一部で、ほとんどはショートカットで植林を下っていった。なお、前回は林道付近は雪が無く藪が出ていて下りでもショートカットする気が出ない状況であった。

 トレースは標高1050m付近から先では地形図に記載されていない雪に埋もれた林道を何度もショートカット。しかしトレースは一本ではなくあちこちに分散しており、この時期はいろいろなルートを自由に歩いているようであった。もちろん、林道を素直に歩くトレースもあった。スキー跡は立ち木が多い植林帯よりも林道の方が適しているようだった。最後のショートカットの踏跡はルートミスらしく、最後で登り返しがあって林道へ下りたいが崖状でなかなか下れず、適当な場所で強引に林道に下った。これより下では林道は直線で最短コースなのでショートカットは不要だ。

 小白山谷を立派な橋で渡り、その先で除雪終点が登場し1台のオフロード車が駐車していた。路面は完全に雪に覆われており、普通車ではあまり入りたいと思える路面状況ではなかった。石徹白川にかかる橋に達すればもう路面に雪は無い。橋の反対側の僅かな駐車余地には2台の車があり、そのうち1台は関東ナンバーで少々驚いた。東京からここまで登りに来るとは200名山ハンターだろうか。

 登り返して私が駐車したスペースへ。さすがにこの時間は満車状態で、駐車している車のナンバーは中京圏が目立ち関西もあった。もう出発時刻としては遅いが下山時間としては早いので、人の姿はほとんど無い。着替えていると2人の男女が戻ってきた。出発時刻を聞くと5時とのことで私より早かった!

 次に下ってきた山スキーヤーは私の隣に駐車していた男性で、長さ1mくらいの小さなスキーを背負うのではなく紐でぶら下げていた。重さは片方で1kgくらいとのこと。思ったよりも軽くないと言ったら、それは板の種類で大きく変わり、長さ1.5mでも900gを切るようなものもあるとのこと。ただし競技用で無理をすると折れるとのこと。通常の山スキー用では2kg前後らしい。私もラッセル対策で山スキーを考えたことがあるが、店に行って値段を見て断念したと話したら「合計\30万はみておかないとダメだろう」と言っていた。

 この男性とはその後もいろいろ話をしたが、羽島市在住で相当の猛者らしかった。ここに来た回数は2桁までは行かないが数回どころではないようだった。今日ここで滑って明日は仲間がここへやってきてまた滑るという兵だった。仲間も兵が多いようで、中には新穂高温泉から赤牛岳日帰りをやる三重県のスキーヤーがいるとのこと。相当変わり者らしく「天気が悪いから槍ヶ岳へ登る」なんて選択をする人とのことだった。私も天気が悪くても山に登るがそんな日は手軽な山だ。

 私は半年前に左膝の靭帯を切ってリハビリ中だと話したら、男性も山スキーで膝の靭帯を切って手術をした経験があるとのこと。切ったのは副側靭帯ではなく前十字靭帯等の重篤な場所だったようで、リハビリで半年以上かかり、その後も自主リハビリを長期間やったとのことで、今も膝には靭帯保護の装具を装着していた。話によると山スキーでは膝の靭帯を切るのはありがちな怪我とのことだった。

 話は尽きないが今日は日差しが無く気温が低くて外での立ち話は長時間はできず、私は車に乗り込んで明日の毘沙門岳向けて出発した。駐車場は満車だったが、先週のように路側までいっぱいに車が並んでいる状況ではなかった。これは今日の天気が原因だろう。先週はピーカンだったからなぁ。それでも広い県道路側に駐車している車も見られた。明日は天候が回復するのでもっと車が増えるかな。


まとめ
 僅か1日違いで雪質が大きく変わってほとんど沈まない残雪期らしい歩きを楽しめた。今回はスノーシューよりもアイゼンの方が利用価値が高かったかもしれない。これからは行き先によってはスノーシューではなくワカンにした方がいいかもしれない。徐々に雪解けが進んで尾根の雪が割れて藪漕ぎが必要になる場面も増えてきそうだ。雪解けが進むので登れる山がどんどん減ってくるので、どこを優先して登るのか山の選択に頭を悩ませそうだ。

 

都道府県別2000m未満山行記録リスト

 

日付順2000m未満山行記録リスト

 

ホームページトップ